ソーシャル・ビジネスとも呼ばれる「社会貢献事業」は、地域や社会のいろいろな課題を解決しようとする取り組みで、それにチャレンジする人がソーシャル・ベンチャーまたは社会起業家と呼ばれます。
ソーシャル・ビジネスを始めることになるきっかけは、自分が見聞きした社会の問題を解決したいということが多いのです。
若者はよく「社会に役立つ仕事がしたい」と言いますが、それは他の人から良いことをやっていると評価されたいという「承認欲求」や自分らしくありたいという「自己実現欲求」が強いからと考えられます。
しかし、夢や理想だけでは、事業を軌道に乗せることはできません。また、「自分らしさ」は、他の人に認めてもらいたいという受け身で手に入るものではなく、いろいろな手段で世の中に認めさせるものです。
(1)取り組みたい「社会貢献事業のテーマ」を明確にすることが最初の一歩です。
そして、テーマをシンプルなフレーズや簡潔な文章で表現できるところまで、具体的なビジネス・プランに煮詰めなければなりません。
(2)気づいた問題が起こっている背景を調べます。
その問題の歴史、背景、原因を探ります。いくつかの要因が絡み合って起きている場合には、どこに対してアプローチするのかを考えます。
(3)やれる範囲で、とにかく始めてみる。
「こうあるべきだ」とか「誰それがいけない」と言うばかりで何もしようとしない人たちよりも、小さな一歩でも踏み出す人が尊いのです。副業や週末起業など無理のないスタイルで、やってみましょう。
社会起業家は、「人々の共感を資本に変えていく」人です。お金だけではなく、世の中のあらゆる立場の人たちに共感してもらって、有形無形の協力を引き出すのです。みんなを巻き込んで、より多くの人たちとの共感の輪を作ることで、地域や社会の課題の解決を目指します。
そのために大切なのが、(1)事業のテーマを明確にすることで、自分の事業を分かりやすく、しかもインパクトのある表現で説明して、「共感」してもらわなければならないのです。共感を呼ぶ言葉を考えて、事業への協力をお願いするためにプレゼンのコンセプトを整理したり、トークを磨くのです。
ボランティアの大学生たちが自分たちの経験を話すことで、高校生たちとの対話の場を作る「新しいキャリア教育プログラム」と認知されている「カタリ場」は、ソーシャルビジネスの代表的な事例として、取り上げられています。
キャストと呼ばれる大学生が紙芝居形式で高校時代の成功談や失敗談、大学生活で打ち込んでいることなどを話して、それをきっかけに高校生たちとの対話が始まるのです。紙芝居は、円滑なコミュニケーションのためのアイスブレイクとして活用されているようです。
「カタリ場のキャストを経験した学生は、職場でも主体的に仕事をする姿勢を持っている」と評価する企業の人事担当者からの声もあるそうです。
ソーシャル・ビジネスを軌道に乗せるためには、「何をしたいのか」を分かりやすくアピールして、多くの人たちに共感してもらって、協力してもらわなければなりません。紙芝居を創作するプロセスにはヒントになることがたくさん含まれています。
紙芝居を創作する場合には、まずどんなテーマを取り上げるかを検討するところからスタートします。テーマが決まったら、自分の思いをどのようなストーリー展開で伝えるのかを考えます。
次に、聞き手にとって分かりやすくて、心を動かされるような言葉を選びます。あれもこれもと盛りだくさんの情報を伝えるのではなく、削ぎ落したシンプルな内容にして、話し手と聞き手の間に「共感」を作っていくのです。
スクール紙芝居レッスンワンでは、社会課題を取り上げた紙芝居を創作して、それをサポーターの皆さんに共有してもらい、紙芝居というメディアを通じて、子どもたちだけではなく、幅広い年齢層の人たちに楽しみながら学んでもらうきっかけになることを目指しています。
参考資料
「社会起業家の教科書」大島七々三著 中経出版
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